きのうみた夢どんな夢

HAPPY、自由と音楽と

HAPPYというバンドを久しぶりに聴いている。
京都出身の5人組バンドで60s、70sっぽいサイケデリックロックをやっている。

ファーストアルバムを聴いてたのでそれ以来、7年ぶり。

7年ぶりともなると休止してたりメンバーが抜けてたり系統が変わってたりそれが全部あったりするものだけど、HAPPYはそのまま5人全員揃ってやってて、全然追ってなかったのに喜ぶ権利もないけど嬉しかった。
当時このバンドは傍目に見ても勢いがあってこのまま大きくなっていくんだろうという印象だったから、そのあとそういう話を聞かなかったことにあれ?とは思っていた。だからちゃんと続けてくれていたことになおさらびっくりもあった。
メジャーに行く話をやめて自主制作に戻っていたらしい。
音楽に商業面が必要なことも、メジャーレーベルにだって素晴らしい音楽はたくさんあることもわかっているんだけどさ、メジャーへ行かずに自分たちだけで音楽やり続けて、全員揃ってバンドの結成10年を迎えているバンドがいるっていうの、やっぱり最高じゃん。超ロックじゃん。そりゃ長く続けるのがいいとも限らないけど、少なくともバンドメンバーが仲良いことなんていいに限るでしょ。

そう、これも傍目の印象だけど、たぶん彼らはめっちゃ仲がいい。小中高で出会った5人らしい。雰囲気が似ている。揃ったビジュアルレベルと統一されたヘアメイクで見分けがつかないアイドルグループのやつではなく、ただ過ごした時間の長さで似たような空気をまとっている。

YouTubeに2014年のUSツアー中の映像があって、それを観ている。空気感がなんとも良い。全員がリラックスして楽しそうで、とにかくいい。
好きに動き回っているように見えて、ずっと5人揃っている。同じものに関心を向けて同じように行動している。
誰々はいつでもこういう調子で、誰々1人だけがこれに反応して、みたいな個性が(ないはずはないだろうけど)見えない。5人のパワーバランスも全然見えない。別行動でいえば唯一、「一方その頃Bobは謎のDVDを購入」とか「一方その頃Bobは謎のヘアバンドを購入」とかはあったけどその程度である。そういうひとかたまりの5人、になってる。

幼馴染だ。人間が出来上がる前に出会って好きなものを共有してきた人たちだ。1人が足を怪我したら全員の足が痛くなるんじゃないか。

 

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観ていて楽しいのは、彼らがアメリカでも全然気負わない雰囲気なのもある。遊びに来たみたい。
あちこちを興味深そうに眺めて楽しんでいる。道端で拾ったスペイン語の新聞を覗き込み、拾ったクレヨンでベースケースにバンド名を落書きし、おもちゃのサングラスをみんなで買って頭に乗せる。煙草を吸う。道に捨てられていたCDを漁っている。21歳未満だからお酒はここではまだ飲めない。川で遊ぶ人たちに橋の上から手を振る。また煙草を吸う。通りがかりの人に「今夜あそこでライブするから来てよ!」って屈託なく声をかけ、CDショップで自分たちの音源を置いてもらえないかその場で交渉し、交渉し終えたと思ったら「このCDも聴いてみていい?」とすぐにリスナーに戻ってしまう。
怖いものがない、自由で、音楽を愛する5人の若者でしかないのだ。それが最高にいい。

当時結成2年。それでアメリカツアーをすることについてインタビューされ、「ただ楽しんでる、それが1番大事だと思う」と答える。
道中、機材が不調に見舞われ、寝不足のまま移動を続け、壊れたスーツケースをテープでぐるぐる巻きにして運び、パスポートを失くす。
なんでもあり、怖いものなしの若者5人だ。


若者、と思うたびに考える。
TIME誌が1966年のPerson of the Year「その年の出来事に最も影響を与えた」人物として選出したのは政治家でも宗教的指導者でも、どんな人気俳優でもなく「25歳以下の人々」だった。つまり、若者。
既存の政策、支配、価値観に異議を唱え、音楽やアート、ファッションを通じて自分たちの新しい価値観、考え方を表現し始めた若者世代の台頭がその背景だった。*1
それ以前の時代には、若者はいなかったのだと思う。子供か、大人。若者的な振る舞い、価値観、考え方、そういう生き方というものがなかったのだと思う。
大人のように意思を持ち子供のように自由に生きる、若者。
それは歴史的背景のないもので、実績も責任もなくて、純粋で、才能に溢れ、薄命で、抑圧され、軽んじられ、その分だけ自由で何にも属さない。不思議な生き物。


USツアーのHAPPY5人はまさにそんな若者に見えてすごくいい映像だった。
人生のそういう一時代、それを私は、まあ楽しかったけどそんなに素晴らしいものとは思っていなくて、でもそれをいいと思えるから音楽のことがやっぱり好きだなと思った。
逆か。音楽があるから若者時代をいいと思えるのかもしれないな。

 

W.O.O>出演の新鋭バンドが捉える、カルチャーと音楽の関係性 | Qetic

アルバムジャケットの写真が自宅って聞いて最高だなと思った。ロックバンドの理想像すぎる。

 


渋谷www xで初めてHAPPY観てきた。
絶対もっと早く行くべきだったけど、自分の中で1番楽しめるタイミングだったような気がする。思えばHAPPYが話題になってた頃、自分は珍しくメロコアが全盛期で「サイケ…ふむ…ライブ難しそう…」みたいな感じだったのかもしれん。
遂に見たHAPPYはめちゃくちゃかっこよかった。令和の日本でここまでサイケデリックやってちゃんと現代のかっこいいをやってくれるバンド、なかなかいないのでは。
もういくらでもやってくれと思いながら聴いていた。もっとどんどん観客を置いてけぼりにしてほしい。メジャー蹴るようなロックなやつらが「みんな〜!楽しんでくれてますか~?」みたいにはならんでしょ。なっていただいてもいいのですけど。
メンバーが、観客よりメンバー同士を見てる感じだった。
自由と平和と音楽を好きな5人であることが全然変わっていないことがわかって良かった。
彼らの音楽が一過性のものではなくて、ちゃんと続いているものだとわかって良かったな。音楽が若さによるだけのものじゃないことが(若さにゆえに生まれた音楽もそれは素晴らしいのだけど)嬉しい。
あとサイケデリックロックって、むしろ年季入った方がかっこよくなる稀有なロックなのではと思った。
次のアルバム出すの心待ちにしています。

 

7年前に好きになったきっかけのMVが見つからない。たしか曲はmagic。加藤マニさんディレクターのやつ。

 

 

 


*1 参照 「ロックとカウンターカルチャー 激動の3年間」室谷憲治